January 27, 2012

友だち

先日、弾丸で東京に行くことになった。それまでは結構テンションの針が暗い方に振り切れていて、どうしようもなかったので、本来なら数日かけてもう少しゆっくりと東京訪問を楽しみたかったところ、1泊2日というスーパー弾丸の日程になってしまった。まずは、東京へ行くかどうか迷っていた中、モーニングでコーヒーぐびぐび飲みながら私の負の針が振り切れるところまで追い詰めてくれた友だちに感謝しておこう。嫌味ではなく、本当に。

「いやぁ~、シンプルが一番ね」

などと、旅をしている時にはこれを心底実感して旅日記で叫んでいるのだが、実際には、「せっかく東京に行くのだから、そこにいる友だちにできる限りたくさん会いたい」と思うのもこれ、人情。というか、私ときたら、一度も東京に住んだことがないくせに、気がつけば結構な数の友だちが東京にいるんである。誰とも東京では知り合ってすらないのにである。

今回の限られた時間の中であった友だちは、6名。少し長くなるが、その6人について少し語ろうと思う。

まず、初日の晩に会った3人のうちの2人。数年前に、JETプログラムで兵庫県の田舎に来ていたときに友だちになったのだが、そのうちの、なんと2人が日本に戻ってきているのである。そのうちの一人にかつて質問したことがある。

「せっかく日本にいるのに、もっと頻繁に旅せぇへんの?」

日本に来ている外国人は結構たくさん旅をしている。日本国内や、近くて安いという理由からアジアの国々など、である。私の質問に対して、彼はこう答えた。

「日本に住むためにきてるから」

他愛のない会話だったので、本人は覚えていないだろうが、私はこの考えに激しく感動したのを覚えている。旅をしながら見る風景と、暮らしながら見る風景は違うのだ。当たり前のことだけど、「暮らす」ことに重きを置いた中で見る風景は、ぼんやり過ごしたり、休みにする旅を心待ちにあくせく働いたりすると、ただの日常でしかないけれど、外国人として暮らす場合は旅をするよりも毎日がアドベンチャーとカルチャーショックに満ちている。(あるいは、異文化に暮らすという考えで暮らせば、外国人である必要すらないかもしれない。)

もう1人は、一緒に陶芸に行ったり、ピニャータを作ったり手作りが好きだという共通点を持っていたので、 よく一緒に何かを作って遊んだ仲である。また、私がメヒコに行くにあたって3つのフレーズを覚えていった。(というか、その3つだけを引っさげてメヒコに乗り込んだのである。)その3つのフレーズとは、

"Hola!"(こんにちは)
"Dónde está el baño?"(トイレはどこですか?)
"No tengo dinero."(私は、お金持ってません!)

である。馬鹿みたいなフレーズなので、少しスペイン語がしゃべれるようになったころには、つかみとしてこの3フレーズの話をよくしたものだ。そのフレーズを教えてくれたのが、彼女である。スペイン語フレーズブックみたいなのを持っていて、他にもいろいろ教えてくれたが、あほのあたしが覚えていたのはこの3つだけだったのだ。

そしてもう1人は、オーストラリア時代に友だちになった子である。私がオーストラリアの田舎の町の小学校で日本語やら日本の文化を教えるというプログラムに参加した時に彼女は、私より数ヶ月前にその町にやってきていた。

「いやー、ストレスすごくてさ、こっちきて太った」

旨を初対面の時に、いきなり言ってきて驚いた覚えがある。2人とも、無報酬のプログラムでやってきていたので、とにかくお金がなかった。そのくせに、あのでかい国を旅していた。各々に計画を立て、かぶった場所は一緒に旅をして、旅先で別れて、またどこかの町で再会、というようなことをしていた。旅先ではなにか観光したりしないと!!と思って走り回るのが日本人の常なのだが、旅先で別に何もしない、というぐだぐだした旅をするようになったのは、このころからかもしれない。

時間の都合で、前者2人と後者1人は面識がなかったが、「まぁ、ええやろ」とまとめて会うことにしたのだ。

晩ご飯が済み、皆散り散りに分かれた後、私はもう1人の友だちと合流した。メヒコ2年間、苦楽をともに一緒に働いた同僚である。スタバでどうでもいい話をひたすらしたり、旅の帰り道、最強に疲れているのに雨に打たれながら犬の死骸を横目に無言で歩いた仲である。私のスペイン語のお師匠さんでもある。

翌日は、屋久島に行ったときに鹿児島のバッパーで知り合って、屋久島島内でも一緒に旅をした2人と会った。そのうちの1人は、私を訪ねて、私のもう1人のオモロイ友だちMとメヒコまで遊びに来てくれた子で、もう1人は、私がメヒコに行っているあいだに赤ちゃんが生まれて、赤ちゃんと一緒に現れた。

1ヶ月ぶりに会う人もいたけど、大半は「何年かぶり」の再会であった。それなのに、そのうちの誰と会っても「久しぶり」感がうすかった。「東京で」というシチュエーションには驚くのだけれど、「会っている」のは至極当然のような気がした。一緒に過ごした時間は、今までだってそう長くない人たちなのに、なんなんだろうか、この居心地のよさというか、会っているのがふつう、という感覚は。会ってなかった時間が長かったから、いろんな共有することがあるはずなのに、しゃべっている内容は、案外身近な出来事だったりする。そしてまた、彼らと話をしているとめちゃくちゃわくわくする。それぞれ、していることややりたいことは違うけれど、丁寧に真剣に取り組んでいる。のが、伝わってくる。話の内容はしょうもない馬鹿話が多いのだけれど。あかんぞあたし、と思う。がんばらなあかん、と思う。つまりは、元気が沸いてくるのがわかる。そういう友だちがいるって、めっちゃありがたいなぁ、と思う。そのホクホク感とともに東京から帰ってこれたのは、非常に、よかった。

ありがとう、ありがとう。心はぬくいが、足が冷えてきたので、もう寝よう。

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