March 24, 2011

散歩

今日、めちゃくちゃ楽しい散歩をした。

私の好きなティアンギス(青空市)の一つに、チャプルテペック通りで毎週土曜日に行われるアートティアンギスがある。一部の道路が歩行者天国になったり、ライブステージがあったり、いろいろな手作りアートや古本屋さんの露店が、夕闇の中に立ち並ぶというとてもいい空間なのである。その中で好きな露店の一つに、ウイチョール族のおねえさんがビーズアクセサリーを売っているところがある。

ビザの関係で、メヒコに滞在できる日数が限られているので、ここらでちょいと日本の家族にお土産的なものを買おうかな、と思って先日アートティアンギスに足を運んだ時のこと。ビーズのネックレスやブレスレットはかわいいのだけれど、母親にその話をしたところ「いや~、でもお母さんの歳でそんなんつけてたらあいつあほちゃうか~、ってなるやろう~??」と言っていたので、携帯ストラップとかの方がいいかな、と思い、お姉さんにあるのかどうか聞いてみた。答えは残念ながら「ない」とのこと。しかし、「じゃあ、来週までに作って、今度持って来てあげるわ」という。

すでに何度かその店には通っているので、顔なじみにはなっていたけど、まさかそんなスペシャルオファーが受けられるとは思ってもみなくて、「こういうものを、○個ほしいねんけど~。」と急遽商談のようになって、よくよく話を聞いてみると、お家でも販売をしているらしい。しかも、次週の土曜日は用事があってティアンギスには来れないというので、「水曜日に家に取りに来て」とのことになった。火曜日にセントロに行ったときにたまたま教えてもらった住所の通りを見つけたので、その近くをうろうろ探してみると、あっさりとその家を見つけてしまった。見つけてしまったら、入ってみたくなるのがこれ人情と言うもの。住居のある建物の中で、インディヘナの自然療法の学校があるらしく、そこの生徒さんと思われる人たちが4時からの開門を待っていた。それにまぎれて私も入ってみると、うまい具合にお姉さんと取り次いでもらえた。

「あんた、約束は水曜日よね?!」

といわれたので、

「近くをあるいてたらここを見つけたからあいさつをしに。じゃあ、また明日!!」

と言ってわかれた。そして翌日の今日。のこのことまた同じところにやってきて、また取り次いでもらった。すると、お姉さん(テレ)は、

「実は、まだストラップの金具のところができてなくってね~。」

とのこと。また後日着てくれといわれるのかと思いきや、

「今から一緒に買いに行く??」

と不意に誘われたのでびっくりしたけど、「も、もちろん!!!」と返事して、テレとベビーカーに乗った子ども(三男坊)と一緒に金具を買いに行くことになった。

「いやー、暑くてさ。外に出かける気にならなかったのよ~」

と言いながら、テクテクと歩いていく。テレは、バイリンガルだ。ウイチョール族には、ウイチョール語と言う独自の言語があって、家族内ではウイチョール語を話し、メヒコ人や一般生活で必要なときはスペイン語を使うんだそう。それを自在に使いこなしている。ウイチョール語の文法とかは全然知らないけれど、簡単なあいさつを前にティアンギスで会った時に教えてもらったかぎりでは、発音などは結構スペイン語と違う。そんなバイリンガルの彼女は、とても人懐っこい。そして、寛大だから、私のめちゃくちゃなスペイン語にも嫌な顔をせずに付き合ってくれるし、彼女が話すときはわかりやすく話してくれたりする。

暑い暑いと言いながら、目的地は決まっているらしく、ベビーカーを押しながらずんずんと歩いていく。民族衣装をまとったテレと並んで歩くアジア人。はたから見たら、何の組み合わせや?!と言う感じだろう。歩きながら、いろいろな質問をした。グアダラハラの出身なのかとか、どうしてグアダラハラに住んでいるのかとか、ウイチョールの人たちはみんなビーズや刺繍ができるのかとか、どれくらい作るのに時間がかかるのかとか、それは難しいのかとか。普段聞けない話なので、どんな答えが返ってきても興味深かった。へぇ~、へぇ~!すごい!すごい!!を繰り返しながら歩いていると、目的の店に着いた。

小さな商店である。素材大国メヒコだから、ビーズなんてものはどこにでも売っていると思っていたが、彼女によると、いつもそこのお店で買うんだそう。美しく仕上げるには、ビーズの色や大きさがとても重要なんだそう。だから、そこのお店のビーズを使わないと、いいものができないといっていた。プロだ。さすが6歳の頃から作り続けているというだけある。話を聞いていると、私と同い年なので、もう23年もビーズや刺繍をしているという計算になる。う~む、すごい。幼い頃から、おばあちゃんや家族の人からじきじきに教わるんだそうで、作るときには何もみない。複雑なデザインでも、頭の中にもうデザインが入っているとのことだった。やっぱり、職人はかっこいい。しかし、あんな精巧なデザインのものが頭や体に染み付くとは、ただただ驚くばかりである。技術や伝統がそのようにして脈々と受け継がれて生きた、そしてこれからも受け継がれていくんだな、と考えただけで、ものすごく感動してしまった。だけそ、それを彼らは自然のこととして行っている。そのあまりに自然な振る舞いに触れることができて、めちゃくちゃ得した気分になった。メヒコの民芸は、このような人たちに支えられているのだな。これは本当、尊敬に値する。

買い物が済んで、もう一度家に戻って早速金具を取り付けてくれた。できあがったものを袋に入れてもらって、興奮冷めやらぬまま鼻息も荒くテレの家を後にしたのであった。

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