February 11, 2012

洞窟

ある日、いつものようにサンクリストバルの街をうろついていた。 サンクリストバルでは、なかなかいい感じのカフェを見つけられずにいたのである。3週間くらいその街に滞在するつもりでいたので、やはりゆっくりと本を読んだり、旅ジャーナルを書いたりできるところを見つけようと思っていた。

Guadalajaraでは、家の近くにあったというのと、異常に店員がフレンドリーで居心地がよかったので近くのスタバが私のコーヒー基地であった。Guanajuatoでは、Café Talという学生や観光客がたくさんいるカフェがコーヒー基地になっていた。理由は、安くて美味しいコーヒーがおかわりし放題だったのである。インターネットをしたり、勉強をしたり、本を読んだりして、日が沈むのを待っていたものだ。(坂の多い街で、私の家が一番上にあったので、日が沈むまでは暑くて歩く勇気が出なかったのだ。それに、時間もあった。)

こんな生活をしていたので、もうコーヒー基地がないとやってられん、という人間になってしまっていたのである。そんなわけで、サンクリストバルでもいきつけとなるコーヒー基地を探していたのだ。しかし、なかなか「これぞ!!」というところにめぐり合っていなかった。机の高さといすの高さが微妙であったり、長居するのに適さないBGMがかかっていたりという具合だ。なかなかのmamón(マモン:不平不満をよく言う人)っぷりである。

そういうわけで、街を徘徊していた。そして一軒の文房具屋に入った。ポストカードを買うためである。旅先からは、ポストカードを自宅に送ることを習慣にしている。家族に旅先の香りを送りたいというのもあるが、その街の消印がつくし、旅から帰ってきた時に自分で改めてみてニヤニヤできるからというのもある。いずれにしても、ずいぶん長く続けている習慣のひとつだ。

その文房具屋には、かなり年季の入った売れ残りのポストカードがたくさんあった。その中に、洞窟の写真があった。

私は、なぜか洞窟が大好きである。

なので、がっつりと食いついて店のお兄ちゃんとおっちゃんに、

「こ、こ、これはどこなんですか?!」

と尋ねると、意外にも、

「すぐそこにあるよ。車で15分くらいだよ。」

とのことであった。ま、まじでか。洞窟に15分でたどり着けるなんて、行かない手はない。そこは、"Rancho Nuevo"というところで、サンクリストバルからはコレクティーボで簡単にいけるはず、とのことだった。そういうことなら、と、早速コレクティーボのある場所と、価格調査に出かけた。私が乗ってきた長距離バスのターミナルからもう少し離れたところに、コレクティーボ乗り場があった。行き先はさまざまで、会社もさまざま。大きなバンがずらりと並び、その前を歩いていると、呼び込みのおっちゃん・お兄ちゃんがものすごい勢いで声をかけてくる。ガイドブックには、長距離バスや市バスのことは載っていても、コレクティーボなどの情報はあまり載っていない。しかし、このコレクティーボというのは、メヒコにおいて場所によっては使い勝手がよく経済的で助かるのだ。その日は、乗り場と金額を確認して帰った。

翌日、再びコレクティーボ乗り場に向かい、おっちゃんに行き先と金額を確認して乗り込む。目的地に着いたら声をかけてほしいと頼むのも忘れない。乗り込んだからと行って、すぐに出発するわけではない。乗り合いバスなので、できるだけたくさんの乗客を乗せて運転したいというのが、これ商売人。ある程度集まってからついに出発。しかし、出発してからも運転手はまだ乗客を集めたいらしく、のろのろと運転しながら歩道を歩く人々に行き先をアピールしてさらに客を集める。

意外に早く目的地についた。一人ぽつねんと下ろされた。しかし、「お前の行きたいところは、この道をまっすぐ行ったところさ!」と付け加えてくれた。言われたとおりに歩いていくと、"Rancho Nuevo"と書かれた看板が見えてきた。「入場料、車1台につき●ペソ」という表示がしてあった。私は、徒歩だから、入場料はいらんのかな?!と半信半疑で、ゲートを徒歩で通過。入り口のおっちゃんと目があったから「Hola~」とあいさつを交わすも、お金のことは何も言われないので、どうやら徒歩の人は無料らしい。

中は林のようで、きれいに整備された公園になっていた。ウォーキングトレイル的なものもあるし、バーベキューゾーンや、乗馬コーナーなんていうのもある。もっと奥に歩いていくと、売店もあった。なんだ、整備されたきれいな公園じゃないか。さて、洞窟は、と地図で確認して歩いていった。

洞窟に入るにはお金がいるらしく、入場ゲートが設置されていた。10ペソ支払っていざ、内部へ。


入ると、ひんやりとしていて上から雫がポタポタピタピタを落ちて、薄暗かった。歩道は整備されてあったけど、岩に説明もないし、電灯も普通の蛍光灯だった。日本の、秋芳洞に行ったときはいわがいちいちネーミングされてあって、それの説明が書いてあったり、カラフルなライトを当てられて凝った演出がなされていたから、てっきりそういう感じなのかと思っていたのだ。 でも、そのとりあえず歩道は整備したから後はご自由にという、工夫された感じがないのがメヒコっぽくていいなと思った。この洞窟が意外と奥行きがあって、見ごたえがあるのだ。他に誰もいないので自由自由、と「わ!!!」と声を出してみたり、写真を撮ったりしてゆっくりと見た。天井から垂れ下がっているのや、ひだのようになっているところや、以上につるつるになったところがあって、本当、自然は不思議だ。予想外で、計算されていなくて、美しい。見ていて、飽きない。「このおかずあったらご飯何杯でも食べられるわ!」じゃないけど、この景色があったらいくらでも時間がつぶせそうな、そんな感じ。でも、内部は意外に冷えていて、長時間いると寒くなってきたので、ええ加減引き返すことにした。

ニヤニヤと歩いていると、唯一いた他の客がいきなり「写真を撮ってあげましょうか?」と声をかけてきた。断るのもなんなので、一応撮ってもらったけど、なんとも微妙な笑みのピンボケの写真がこの洞窟の思い出として残ったのである。

ちなみに、この洞窟の名前は、"Grutas de Rancho Nuevo"というらしい。Grutaは、辞書で調べると「洞窟」なので、"ランチョヌエボの洞窟"ということか。そのまんまやん!!

No comments:

Post a Comment