February 09, 2012

Zinacantan2


ラッキーなのか、日常茶飯事なのかはよくわからないけど、サンクリストバルデラスカサス滞在中に周辺の村を訪れると、そのたびにお祭りが催されていた。Zinacantanに行ったときもお祭りの最中だった。

村の男の人たちは、黒い長いポンチョのような福を着て、カラフルな色のひらひらがついた帽子をかぶり円になってなにやらステップを踏んでいる。その後ろの方では、バンド隊がラッパやら太鼓やらで音楽を奏でている。なかなか賑やかな様子だ。踊っている男の人たちは、ゆっくりとぐるぐる回ったりなんだりしていて、足元がよろめいている。

不思議な踊りだなぁ、というか、これはなんなのだ?!と思って誰かに聞こうと思い周りをきょろきょろしてみたけど、もう1つフレンドリーな感じの人がいなかった。このお祭り?儀式?のほうがはるかに大切だから、というのもあるけれど、あまり外国人に興味がないというか、そういう印象を受ける。ものめずらしそうに、「外国人」を見る目で視線は感じるのだけれど、視線の方に目をやると誰とも目が会わない、という感じ。仕方がないので、地元の人ではなさそうなおっちゃんに声をかけてみた。

おっちゃんは、他州からツアーのコンダクターとしてやってきたらしく、儀式について聞いてみると、Poshというお酒を飲んで踊るお祭りだということだ。言われてからもう一度円のほうに目をやると、ボトルを回し飲みしているのが見えた。ポッシュというのは、サトウキビから作られるお酒で、日本で言うところの焼酎のようなアルコールである。かなりきついお酒らしく、たまにコーラや水も回されていた。薄めながら飲んでいるのだろう。男の人たちはそうして円になってお酒を飲み、踊らない人たちも周りでそれを見ながらお酒を飲んでいた。女の人や子どもたちは、少しはなれたところに腰を下ろしてコーラを飲んでいた。その間を、豆売りのおっちゃんがCacahuate(ピーナッツなどの豆)の入った箱を持ってうろうろしていた。

しばらくすると踊りが終わり、衣装をまとった人たちは列を作ってどこかへ行ってしまった。その間、教会の内部を見に行ったり、そのあたりをうろうろしていると、音楽隊の中の若者が1人駆け寄ってきて話しかけてきた。残りの音楽隊のメンバーは遠くの方でニヤニヤしながらこちらを見ているので、完全に冷やかしだな、と思いながら若者と話していると、彼らはシナカンタンからさらに1時間くらい離れた街からやってきたらしい。この儀式で演奏するために呼ばれたのだそうだ。

街をうろうろしていると、遠くにもうひとつ教会があるのが見えたので、歩いて行って見ることにした。すると、さっき踊っていたおっちゃんたちが集まっていた。どうやら、ラウンド2はこの教会の中で行われるらしかった。続々と男の人たちが教会の中に集まりだした。とても神聖な感じで、とても外国人観光客が入っていいという雰囲気ではなさそうだ。「でも気になる」ので、遠巻きに教会の内部をうかがってみることにした。

電気のない薄暗い教会の中で、今度は木弦楽器のバイオリンみたいなのや、アルパという琴のような楽器の音色に合わせてまた円になってステップを踏みながら踊っていた。もちろん、ポッシュをさらにあおりながらである。その様子を、写真を撮るでもなく、じいっと教会の外からのぞいていると、一人のおっちゃんが

「中に入ってみてもええよ」

と声をかけてくれた。これは予想外で、めちゃくちゃ感激して「まじですか?!いいんですか?!」と興奮気味に「ありがとうございます」と言って中に入らせてもらった。

中に入ると、普段教会に並べられてあると思しき長いすが端の方に寄せられていた。その上には、よっぱらいのおっちゃんが何人か横たわって寝ていた。踊っている男の人たちに目をやると、完全に酔いが回って、足元がふらふらになりながら踊っている人もいた。他のおっちゃんに比べると、まだ彼は若造っぽくて、目が据わっていて酔っ払いと化していた。しかし踊らなければならないので、回ってきた水やコーラをがぶ飲みしていた。そして、またステップを繰り返し、たまに力強く地面を踏み鳴らす。ポッシュが回ってきたらまたポッシュをぐいと飲み足して、踊り続ける。木の楽器の音色があまりに素朴で、その淡々とした様子は永遠に続くことかのように思われた。

しかし、黒いポンチョとひらひらのついたぼうしをかぶった人たちはこうしてずうっと踊っているのだけれど、シナカンタンのあの綺麗な刺繍が施された民族衣装を着たおっちゃんたちは、教会の中を出たり入ったり割とうろちょろとしていた。この単調な踊りと飲酒をひたすらに続けていて、いつまでするのかわからなかったので、そそくさと教会を後にした。

帰りに、乗り合いバス乗り場でサンクリストバルへ戻るバスを待っていると、また黒いポンチョのあの一団がやってきた。でも、ばらばらに歩いていたので、おそらくその日の儀式が終わったので家にでも帰るところだったのだろう。

このポッシュというお酒、このあたりではよく飲まれているものらしく、サンクリストバルに帰ってからスーパーに行ってみると、普通に棚にたくさん並べられていた。そして、値段に驚いた。確か10ペソしてなかったか、それ前後なんである。(日本円で言うと100円するかしないかである。)……や、安い。

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