July 30, 2010

vivaaerobus

今回の旅は飛行機も使った。vivaaerobus(ビバアエロブス)という、メヒコの若手格安航空会社だ。アエロメヒコなどと比べると、約半額という低価格ぶりだ。

そうすると、「なぜそんなにも安上げることができるのか」という疑問がわいてくるが、実際に乗ってみると無駄が徹底的に省かれているからだ、の一言に尽きる。

まず、国内線なのにもかかわらず2時間前にチェックインしろと言う点。これは、手続きを手作業でするから時間がかかるためである。かといってむやみに早く仕事を始めるわけではなく、チェックインカウンタもぎりぎりまであけない。vivaaerobusのチケットには値段設定が3種類くらいあって、一番安いのは手荷物のみ。次は預け入れ荷物あり。その上のクラスは預け入れ荷物の重量制限が重くなるという違いである。基本的にチケットは自宅でプリントアウトすることが求められている。私たちは、ウォルマートの一角にある予約コーナーみたいなところで購入したので普段は長距離バスに使われていると思われる券に3人分の予約が印字されてあるのみの物が購入証明だった。チェックインは全て人力で行われており、我々のようにプリントアウトされたチケットを持っていない人はその場でチケットをもらうのだが、これが全てスタッフの手書き(あるいはハンコ押印)で、紙の質はコピー用紙よりも薄いくらいのぺらっぺらの紙。乗客名簿が紙にプリントされてあり、一人一人IDと照らし合わせながら確認される。そこにパソコンなどの機器は見当たらない。手間はかかるがシステム導入のコストは省かれている。

チケットにはアルファベットが印字されており、PとA~Dのどれかに丸がつけられてある。ロビーで待っていて搭乗時間になると、そのアルファベットが大きく書かれたプレートを持ったスタッフが大声を張り上げる。

「Pの人!!ここに並んでください」

「次、Aの人!!ここに並んでください」

といった具合である。乗客はそれに従い、アルファベットごとに並ばされて、まるで集団ツアーのようだ。Pはプリメラ(1等)と言うことなのだが、いざ飛行機に乗り込むと、何が違いかと言うと何も違いはない。一番に搭乗できるというだけのことである。おもしろいことに、誰も席は決められておらず、飛行機に乗った順番に好きなところに座ってもいいと言うしくみで、本当にバス旅行か何かのようだった。行きしなの便は空席が目立ったが、帰りの便はほぼ満席で、最後の方に乗り込んだので、いちいち「ここ開いてますか??」と尋ねながら席を探さなければならなかった。ここまで徹底的に無駄を省いた航空会社は初めてだったので、かなり興味深く体験した。

もちろん、機内食などのサービスは無く、代わりにメニュー表があってお金を支払って購入するというしくみである。驚いたことに、短い時間のフライトにもかかわらずたくさんの人がそのサービスを利用していた。あまりにたくさんの人が利用するから、ジュースくらいは実はただなのか?!と思い、しれっとした顔で、「ジュースは何にしますか??」とか聞いてくれるのを期待したけれど、スルーされてしまったから、やはり購入しなければならないようだ。

この徹底した無駄を省いてチケット代を抑えてくれるというサービスは私的にはいいなぁ、と思う。しかし、日本では実現しないだろうと思った。現に、日本の国内線では「手軽にチェックインできる」ためのカードやシステム(ANAのSkipなど)があったりするくらいだから、サービスをどこに置くかと言う視点が既に違っている。「手間」を省くのか「値段」を下げるのか。メヒコは日本の国土の約5倍もある大きな国だ。だから、飛行機は日本の人々が使うよりももっと安価で身近なものでなければならないのかもしれない。そして、この国の人たちは日本人よりももっと時間に余裕があるように感じる。日本人が飛行機を利用するのは、時間が短縮できるから、という印象を受ける。遠いところに行くには、バスや電車は時間がかかるし休みも少ない、だからこそ飛行機を使うのだ、と言う感覚だろう。

しかし先にも述べたとおり、この国の人たちからはさほど時間に切羽詰っている感じを受けない。だから2時間前に空港にこなければならないというルールを受け入れられるのかもしれない。もっというならば、例えばグアダラハラからチワワまでの料金はこのvivaaerobusを使うと、バスと値段がほとんど変わらないんである。でもバスを使う人たちもいる。バスには荷物の重さ制限が無いからだという一面もあると思うが、果たしてそれだけだろうか。この広大で変化に富んだ風景を持つメヒコにおいて、飛行機でビュンとひとっ飛びしてしまうのは便利だけれども味気ない、そんな気もする。

このvivaaerobusを利用したことで、ほんの少しメヒコ人と日本人の時間へ対する価値観の違いを見たような気がした。

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