July 11, 2011

Sin luz

土曜日、家に帰るなり同居人に名前を呼ばれた。

「助けて!!」

と言うから、何ごとかと思って台所に行くと、

「バターをちょっと拝借したい」

との申し出。手元を見ると、どうやらお菓子を作っているらしい。

そういえば、この間、ずっと前に買ったらしいブラウニーミックスが棚から出てきた。

「作ろうよ~」

と言うと、「型」がないから無理だと言う。耐熱皿っぽいものを見つけたので、

「これ使えるんちゃう?!」

と言うと、

「無理やろ……。Hecho en Mexico(made in mexico)やん。怪しい」

しつこく「使えるって!!」を繰り返すと、

「あ~、もうわかった。わかったけど、これ絶対無理やから、明日型を買ってくるから。」

との返事。言うことがいつも適当なので、それもその場をしのぐ言い分かと思って気に留めていなかったのだが、どうやらそれは本気だったらしく、型を買ってきて、お菓子作りに挑んでいたのだ。見ると、オーブンもちゃんとあたためられている。やや。本気だな、と思い眺めていると、「卵割って」と言われ、手伝うことになった。型を買ってきていたので、ブラウニーを作っているのかと思いきや、新たにクッキーミックスを買ってきたらしく、クッキーを作っていた。クッキーの一発目をオーブンに入れ、せっかく方があるのでブラウニーも作ろう、とブラウニーミックスも引き続き開封。焼きあがるのを待つ間、ブラウニーと一緒に食べるアイスクリームを近所のtienda(店)に探しに行った。

私もお菓子作りなど普段しない人間だし、同居人とて18歳男子である。へなちょこ2人が「こんなもんかな?!」「たぶん」を繰り返しながら、なんとかクッキーもブラウニーも完成した。食べよう食べよう、と食べ始めたところ、電気が落ちた。この間も、雨が降っていたときに停電したのですぐ復活するだろうと思っていると、どうやら様子が違う。近隣の家は、明かりがともったままなんである。これもたまに起こる現象なのだが、家が古いからなのか、よくヒューズがとんで停電するのだ。ここ2ヶ月でこれで3回目である。建物の中で2軒に分かれていて、ヒューズボックスとやらはもう1件のほうにあるらしいが、お店なので晩は誰も人がいない。

「ちょっと見てくる」

と家を出て行って、ろうそくを持って戻ってきた。隣の家とコンタクトが取れないので、どうしようもないらしく、ろうそくで夜をしのぐしか方法がないらしい。まぁ、仕方ないな、とろうそくの明かりでブラウニーを食べるというムーディーな夜。

「あああ。することない。暇ー」

確かに、暗いとすることがないし、できることもない。何がしたいか聞かれたので、

「その辺散歩しよう!!」

と提案すると、最初は「は?なんで??」と言われたけど、「近所を探検したい」と言うと、「わかった」といって、散歩が実現した。歩いていると、警察がやたらうろうろとしているのが目に付く。パトロールをしているらしい。車に乗った警察や、歩いている警察、結構な数である。

そのうち、歩いている警察の団体が、細い道に向かって何かを投げつけていた。すると、向こうからも石がたくさん飛んできた。その辺にたむろしている少年ともめているらしいのだ。

「な、なにごと?!?!?!?!」

と聞いたけど、早口で言われたのであまり詳しい状況は分からなかったけど、とにかく警察と少年が争っているということだった。女の人が何か叫んでいて、私は状況がよく飲み込めなかったけど、しばしその様子を遠巻きに見学。しばらく物の投げあいが続いて、それが終わると、警察はパトロールの続きで、向こうの方に歩いていった。これで終わりかと思いきや、怒り狂った少年が、石を警察の建物の中に投げつけだした。しまいめには、でかい石を拾って、階段を上って何かを割る音がした。唖然としてその状況を見守っていると、

「これが、メヒコ」

と、同居人。あ、あんた、そんな悠長な、と思いつつ、メヒコに来てはじめてみる光景やなぁ、とぼんやり思ってもいた。

散歩を続けて、犬にほえられえたり、同居人がアメリカの親に電話をしてお金が公衆電話に飲み込まれたりして家に戻ってきた。電気がなかったおかげで、おもしろいものが色々見れた夜だった。でも、夜の一人歩きは絶対にせんとこう、と思った。

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